Google 広告やYahoo!広告といった媒体による機械学習の精度が高まり、昨今では運用型広告においても機械学習による最適化や自動入札を積極的に取り入れようという風潮が見られます。
従来の手動入札から自動入札へ移行する際、多くのメリットがある一方でビジネスに合った入札戦略を選択しなければ期待した成果が得られない可能性があるほか、広告のパフォーマンスが低下する場合もあります。
今回はGoogle 検索広告とYahoo!検索広告の2つを例に、広告配信の目的に合わせた入札戦略の選び方、各入札戦略のメリット・デメリットや実際の導入事例についてご紹介します。
入札戦略とは
入札戦略とは、広告配信の目的に合わせて、その効果が最大となるような入札の仕組みを指します。
また、入札戦略には自動入札と手動入札の2つがあり、それぞれの入札方法によって選択可能な戦略や設定方法が異なります。自動入札と手動入札の大きな違いとして挙げられるのが、広告を管理するうえでの工数と柔軟性です。
自動入札では入札戦略と各戦略ごとに必要な数値(CPA・ROAS)を任意の値に設定さえすれば配信開始後の定期的な調整等の手間を省くことができます。その反面、調整作業そのものは媒体側で管理されているため、運用者側で詳細を把握するのは難しくなります。
一方で、手動入札では配信状況や成果に応じて入札単価を定期的に、かつ細かく管理できる反面、季節性やセールの開催等を加味したうえで調整作業を行わなければならず、その分手間や工数が掛かります。
手動入札の種類とその特徴
手動入札では、 広告配信の目的や配信状況に応じてその都度手作業で入札を行います。あくまでも運用者の手によって入札が行われるため、季節性等の外的要因を考慮しつつ入札単価を細かく管理することができます。
ここからはGoogle 広告、Yahoo!広告各媒体の手動入札について、導入の目的別にまとめてご紹介します。
手動入札一覧
Yahoo! | 特徴・詳細 | 導入が推奨されるケース | |
---|---|---|---|
個別クリック単価制 | 個別クリック単価 | 任意で設定された単価を上限としてクリック数を増やす | クリック単価を抑制しながらクリック数を増やしたい |
拡張クリック単価 | 拡張クリック単価 | 任意で設定された単価を基準として、入札調整が自動で行われる | クリック単価を抑制しながらコンバージョン数を増やしたい |
各入札戦略のメリット・デメリット
個別クリック単価制
メリット
手動入札において、より多くのクリック数を獲得する(サイトへの流入を促す)ことを目的とする場合、個別クリック単価の設定が推奨されます。広告1クリックに対して支払う料金を任意の金額に設定でき、クリックされた回数分のみ費用が発生するため、合理的な入札設定であると言えます。
デメリット
一方で、最初の入札単価設定から配信開始後の定期的な入札調整まですべて手作業で行わなければならず手間が掛かることに加え、人為的なミスの発生や調整漏れ等の事故も起こりやすくなるので注意が必要です。
拡張クリック単価
メリット
拡張クリック単価はいわゆる半自動入札の入札戦略です。個別に設定した単価を基準として、過去のデータに基づき状況に応じて入札単価の引き上げ・引き下げが自動で行われます。これによって、コンバージョン獲得数を増やしながらも無駄なクリックを減少させることができます。
デメリット
一方で、入札調整そのものは媒体側で管理されるため、個別クリック単価制のようにすべての調整やその詳細を把握することは難しくなります。また、設定された上限クリック単価から大幅に増額・減額は行われないため、コンバージョン獲得の機会損失に繋がる可能性があります。管理できるのはあくまでも基準となる入札単価に限定されるので、個別クリック単価制からの移行を検討されている方はご注意ください。
自動入札の種類とその特徴
自動入札とは、 各媒体のシステムがキャンペーンの目的・入札戦略に応じて自動的に、かつ最適な価格で入札を行う機能です。人力に頼らず機械学習に基づいて入札が行われるため、運用の効率化や簡略化を図ることができます。
ここからはGoogle 広告、Yahoo!広告各媒体の自動入札戦略について、導入の目的別にまとめてご紹介します。
自動入札戦略一覧
Yahoo! | 特徴・詳細 | 導入が推奨されるケース | |
---|---|---|---|
目標コンバージョン単価 | コンバージョン単価の目標値 | 任意で設定された単価を上限としてコンバージョン数を増やす | CPAを抑制しながらコンバージョン数を増やしたい |
コンバージョン数の最大化 | コンバージョン数の最大化 | 予算内でコンバージョン数を最大化する | 獲得総数を重視し、コンバージョン数を増やしたい |
目標広告費用対効果 | 広告費用対効果の目標値 | 任意で設定されたROASを維持しつつ売上を増やす | ある程度のROASを担保しながら売上を増やしたい |
コンバージョン値の最大化 | コンバージョン価値の最大化 | 予算内で売上を最大化する | 売上を増やしたい |
クリック数の最大化 | クリック数の最大化 | 予算内でクリック数を最大化する | サイトへの流入数を増やす |
目標インプレッションシェア | ページ最上部掲載 | 指定の位置に広告を表示させるための入札単価を自動で決定する | 検索結果ページの任意の位置(※)に広告を表示させたい ※最上部以外も指定可能 |
各入札戦略のメリット・デメリット
目標コンバージョン単価
メリット
目標コンバージョン単価を入札戦略として設定すると、コンバージョン数とその他要素のバランスを取りながら配信を実施することができます。なお、目標コンバージョン単価の導入にはコンバージョン計測の設定が必須となります。Google タグマネージャーを使った設定方法については、下記の記事をご参考ください。
デメリット
一方で、過去のコンバージョン獲得数が少ない場合は期待した成果が得られない可能性があるほか、実際のコンバージョン単価(CPA)が目標コンバージョン単価を大幅に上回っている場合、配信ボリュームが急激に減少する可能性があります。このような場合には目標コンバージョン単価を引き上げることにより対処可能ですので、配信状況に応じて適宜対応していくことをおすすめいたします。
下記記事に目標コンバージョン単価についてより詳しく説明しておりますのでご参考ください。
コンバージョン数の最大化
メリット
コンバージョン数の最大化を入札戦略として設定すると、キャンペーンの上限予算(日予算)の範囲内でコンバージョンの獲得数を最大化することができます。CPA重視の目標コンバージョン単価よりもさらにコンバージョン獲得に特化した入札戦略であるため、予算内でコンバージョン獲得数を最大化したい場合やコンバージョン獲得の機会損失をなるべく減らしたい時に活用しましょう。
デメリット
こちらも目標コンバージョン単価と同じく、過去のコンバージョン獲得数が少ない場合は期待した成果が得られない可能性があります。配信開始間もないキャンペーンや過去のコンバージョン獲得数が極端に少ないキャンペーンでの導入には注意が必要です。
下記記事にコンバージョン数の最大化についてより詳しく説明しておりますのでご参考ください。
目標広告費用対効果
メリット
目標広告費用対効果を入札戦略として設定すると、目標とするROASをある程度担保したうえで効率的に売上の増加を目指すことができます。
特にECサイトなどの広告配信ではコンバージョン数そのものよりも売上が重視される傾向があるため、目標費用対効果を導入することをおすすめいたします。
デメリット
一方で、過去のコンバージョン獲得数が少ない場合は期待した成果が得られない可能性があるほか、目標とするROASが現実的でない、もしくは売上を伸ばすことが難しいと媒体側に判断された場合、配信ボリュームが減少する可能性があります。このような場合にはROASの数値を緩和することにより改善が見込める可能性がありますので、配信状況に応じて適宜対応していくことをおすすめいたします。
下記記事に目標費用対効果についてより詳しく説明しておりますのでご参考ください。
コンバージョン値の最大化
メリット
コンバージョン値の最大化を入札戦略として設定すると、キャンペーンの上限予算(日予算)の範囲内でROASを最大化することができます。目標広告費用対効果よりもさらに売上増加に特化した入札戦略であるため、より明確なROASを目標値として設定したうえで慎重に運用したいという方には前述の目標広告費用対効果の導入をおすすめいたします。
デメリット
一方で、過去のコンバージョン獲得数が少ない場合は期待した成果が得られない可能性があるほか、導入後にクリック単価やCPAが高騰する場合があるので注意が必要です。
下記記事にコンバージョン値の最大化についてより詳しく説明しておりますのでご参考ください。
クリック数の最大化
メリット
クリック数の最大化を入札戦略として設定すると、キャンペーンの上限予算(日予算)の範囲内で獲得するクリック数を最大化することができます。
目標とするコンバージョンが直接的な売上に繋がらない場合など、あくまでも成果指標の1つとしてクリック数を重視されている方にはおすすめの入札戦略となります。
デメリット
一方で、「よりクリックされる可能性が高い」という点を重視した配信が実施されることにより検索語句(検索窓に入力される語句)の品質が低下する可能性があるほか、コンバージョン獲得や直接的な売上の増加には繋がらない場合があるので注意が必要です。
下記記事にクリック数の最大化についてより詳しく説明しておりますのでご参考ください。
目標インプレッションシェア
メリット
目標インプレッションシェアを入札戦略として設定すると、検索結果ページの最上部、あるいは任意の位置に広告を表示させられる可能性が高くなります。あくまでも可能性を高めるというだけで、指定した位置に広告を表示させることが保証されるわけではないので、設定の際には注意が必要です。
ブランドの価値や認知度を示すなど、特殊なケースにおいては広告のパフォーマンスの良し悪しに依存せず、広告の上位掲載を維持することが重視される場合があります。このような場合には目標インプレッションシェアを導入するというのも施策の1つです。
デメリット
一方で、広告のパフォーマンスが悪化している場合でもなお上位掲載を重視する戦略であるため、結果的にCPAや費用対効果を悪化させてしまう場合があります。現行の入札戦略から変更、あるいは新たに導入を検討されている方はご注意ください。
下記記事に目標インプレッションシェアについてより詳しく説明しておりますのでご参考ください。
自動入札導入時の注意点
ここまでご紹介した通りメリットも非常に多い自動入札ですが、導入後の劇的な成果改善が必ずしも保証されているわけではありません。そこで、自動入札の効果を最大化させるためのポイントをいくつかご紹介します。
アカウント構造の最適化
自動化は機械学習によるデータに基づいて行われるため、対象となるデータがよりシンプルである方が最適化の効率・精度を向上させることができます。
つまり、アカウント内のキャンペーンや広告グループを可能な限り少ない数で構築し、データの分散を避けることが大切です。
アカウント構造の改善、構築時のポイントについては、下記の記事をご参考ください。
導入直後は手を加えない
入札戦略を変更、あるいは新たに導入した場合、最適な配信が行われるまでには一定の学習期間が必要です。この学習期間において成果の良いパターンや悪いパターンが精査され、最適化に必要なデータが蓄積されます。
ビジネスの特性やコンバージョンの獲得状況によって異なりますが、一般的に1~2周間の学習期間が必要となります。したがって、導入直後はキャンペーンや広告グループの設定に大幅な変更は加えず、広告のパフォーマンスを見守りましょう。
弊社での入札戦略変更・パフォーマンス改善の事例
ここまで各入札戦略の特徴や導入時のポイントについて解説してきましたが、ここからは実際に入札戦略の見直しによって広告のパフォーマンスが改善された事例をご紹介します。
BtoBのお客様で入札戦略の見直しを行い、改善前後の約4ヶ月間でコンバージョン獲得数230%増加、CPA81%改善を実現した事例です。
業種・商材 | BtoB(中小企業、個人事業主支援) |
CVポイント | 資料請求、申込書ダウンロード |
こちらのお客様の場合は目標インプレッションシェアを入札戦略として設定した状態でしたが、クリック単価の改善を目指し、上限クリック単価を設定のうえクリック数の最大化へと入札戦略を変更しました。
その結果、クリック単価の大幅な改善が見られ、同程度のクリック数を約38%の配信金額で獲得することができました。また、クリック単価の改善によりCPAが改善し、同期間で配信金額が減っている一方でコンバージョン獲得数が増加するという結果になりました。
入札戦略 | IMP | CTs | CTR | CPC | COST | CVs | CVR | CPA |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
目標インプレッションシェア | 75,000 | 8,200 | 10.93% | ¥144 | ¥1,178,600 | 135 | 1.65% | ¥8,730 |
クリック数の最大化 | 51,400 | 8,200 | 15.95% | ¥55 | ¥450,900 | 311 | 3.79% | ¥1,450 |


入札戦略の見直しだけでもパフォーマンスの改善が見られますが、併せてアカウント構造の改善などを実施することでより効果的な配信が可能になります。
現状の広告配信において成果の改善に課題感のある方、ご自身のビジネスに合った入札戦略が分からないという方でも、是非お気軽にご相談ください。
おわりに
Google広告やYahoo!広告における機械学習は日々進歩し、データ活用の精度や効率も以前より大幅に改善されつつあります。
従来の手動入札による手堅い運用も1つの方法として確立されていますが、より効率的な広告配信を行ううえで、自動入札の導入は今後より一層重要な要素になると考えられます。
まだ自動入札を導入されていない方、広告のパフォーマンスが伸び悩んでいるという方はこの機会に是非入札戦略の見直しを行ってみてはいかがでしょうか。
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