Salesforceを業務で利用されているみなさんに、ぜひご利用いただきたい機能が「フロー」です。
名前は聞いたことがあるが、まだ利用したことがないという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
Salesforceフローは、Salesforce上での同じ作業の繰り返しや、一定のルールに基づいて人が作業していたところを自動化することで、業務を効率化することができる機能です。
今回は、Salesforceフローを初めて設定する方に向けて、基礎から具体的な設定方法までを解説します。
まだ利用したことがないという方は、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。
Salesforceのフローとは
「Salesforce フロー」は、Salesforceの処理を自動化する機能のことです。
プロセスビルダーとFlow Builderの2つのツールから構成されており、「Salesforce フロー」はこの両方のツールをまとめて呼ぶときに使われる呼び方です。そして、少しややこしいですが、Flow Builderから作成された自動処理を「フロー」と呼びます。
プロセスビルダーは、レコードの作成や項目の自動更新、Chatterへの投稿などのアクションを自動化することができる便利なツールです。
ただ、プロセスビルダーは今後廃止される予定で、後継ツールのFlow Builderへと一本化されていく予定であることがSalesforce 公式からアナウンスされています。
Salesforce フローへの移行: ワークフローとプロセス ビルダーの廃止
Flow Builiderは、プロセスビルダーの上位互換的な存在で、自動化できるアクションの種類も多く、「画面フロー」の機能を使えば画面の作成が可能になるなど、プロセスビルダーで出来なかったことが出来ることが特徴です。
Salesforce フローはどんなことができるの?
Salesforceの自動化というと、ワークフロールールやプロセスビルダーを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
これらの機能と比較したときのFlow Builderの違いは、Salesforce組織内や外部システムの自動化がいままでよりもはるかに簡単に、そして高度な自動化ができるという点です。
フローを活用した場合、自動化によりどのような業務効率化ができるのかについてご紹介いたします。
事例1:レコードの一括作成/更新
フローでは、設定した条件に合致したときにレコードを作成/更新/取得/削除することができますが、これを複数のレコードに実行することも可能です。
例えば、商談を作成した際に商談成立までにすべきTodoを一括で作成することができます。
事例2:主従関係のないオブジェクト間での積み上げ集計
通常、積み上げ主集計は主従関係のあるオブジェクトでしか設定出来ませんが、フローを用いることで主従関係のないオブジェクト間でも積み上げ集計を実装することが可能になります。
例えば、「予算」というカスタムオブジェクトに、商談オブジェクトに記録されている月別、四半期別の商談金額を積み上げ集計することなどができます。
事例3:ホーム画面やレコード詳細画面から新規レコードの作成
画面フローを使うと、特定の画面からレコードの作成や更新ができるようにすることが可能になります。
例えば、ホーム画面から簡単に取引先を作成できるフローを作成したり、取引先画面から商談を作成できるフローを作成することができます。
すぐにレコードの作成/更新が必要な、コールセンターやインサイドセールスなどのユーザーの業務の効率化に役立ちます。
Flow Builderで重要な3つの概念
視覚的に扱いやすいFlow Builderですが、しっかりと使いこなすためには3つの概念を抑えておく必要があります。
それぞれの概要と詳細をご紹介いたします。
フロー種別
フロー種別は、フローをどこから呼び出すか?(起動条件)の分類です。
フロー種別のカテゴリーは、画面フローと自動起動フローの2種類となっています。
フローを作成する際は、一番最初にフロー種別を選択します。
カテゴリー | フロー種別 | 説明 |
画面フロー | 画面フロー | 画面から起動するフロー。 |
自動起動フロー | レコードトリガーフロー | レコードの作成、更新、削除に実行されるフロー。 |
スケジュールトリガーフロー | 設定したスケジュール通りに実行されるフロー。特定の日付や、定期的な実行が可能です。 | |
プラットフォームイベントトリガフロー | Salesforceが外部アプリケーション等から通知を受信した時に起動するフロー。 | |
自動起動フロー (トリガなし) | Apex、プロセス、REST API などによって呼び出されたときに起動するフロー。 | |
レコードトリガオーケストレーション | 指定したレコードタイプが作成または更新されるたびに実行されるフロー。 |

画面フローで設定できる主なコンポーネント
画面フローで設定可能なコンポーネントは、入力用と表示用の2種類に分類することができます。
入力用のコンポーネントでは、ボタンの表示や非表示の設定やボタンラベルの変更ができるほか、入力必須設定や入力規則によるエラー表示も行うことが可能です。
カテゴリー | コンポーネント | 説明 |
入力用 | 各種データ型 | テキスト、数値、通貨、日付など |
ファイルのアップロード | 添付ファイルなどをアップロード | |
表示画像 | 画像の表示 | |
その他 | 選択リスト、ラジオボタンのほか、複雑な機能を持ったコンポーネントもある。 | |
表示用 | セクション | レイアウトをセクションに分割して項目を適切に配置できる。 |
表示テキスト | 表示専用、入力は不可。 |
リソース
リソースとは、フロー要素を記述する際に使用できる値です。
変数やテキストテンプレートなど、様々な値を設定することができます。
リソース名 | 説明 |
---|---|
変数 | 計算した結果を記録するための値です。 テキストや数値など、様々な要素の計算結果をフローに使用できます。 |
定数 | 固定の値です。 |
数式 | 数式項目と同じような処理ができます。 関数も使用できますが、全ての関数が使用できるわけではありません。 |
テキストテンプレート | メールの本文などで利用できる、テキストのテンプレートです。 |
選択リスト系 | 以下のようないくつかの設定方法があります。 ・選択リスト値の設定をそのまま利用する ・レコードから選択リストの値を生成する ・フロー独自の選択リスト値を設定する |
フロー要素
フローは、要素を組み合わせて設定していきます。
要素のカテゴリーは大きく分けると、相互関係/ロジック/データの3つに分類することができます。
ここでは、代表的なフロー要素をご紹介いたします。
カテゴリー | 要素名 | 説明 |
相互関係 | 画面 | フローが実行される画面を設定する。 |
アクション | メール送信やChatterへの投稿、Apexの呼び出しなどを行う。 | |
サブフロー | 他のフローを呼び出す。 | |
ロジック | 割り当て | 変数へ値をセットする。 |
決定 | 条件で分岐する処理。if文のようなイメージで、「こうなったらこうする」を処理します。 | |
ループ | 繰り返しの処理。 | |
一時停止 | フローを一時停止する。指定した日付や、日数が経つと次のアクションを実行します。 | |
コレクション検索条件 | 設定した条件を満たすソース項目のみに絞り込んで別のコレクションを作成します。 ループ処理の回数を減らす目的でよく使用されます。 | |
データ | レコードを作成など | Salesforceのレコードの取得・更新・削除を行う。 |
上記以外にも様々な要素があり、Salesforceと他のツールとの連携が強化されていくにつれてより多くのアクションが実行できるようになっています。
例えば、Salesforceの商談レコードが更新されたら、Slackの特定のチャンネルに通知を送信したり、商談の履歴を残すためのQuip文書が作成する、といったようなことも可能です。
日々新しい要素がアップデートで追加されていますので、定期的に確認しておくと今まで出来なかったことが出来るようになっているかもしれません。
フローの作成手順
ここからは、フローの作成手順についてご紹介いたします。
フローの作成は、大きく分けて8つの手順があります。
説明に使用している画像は「画面フロー」を設定する際の画面です。
- 新しいフローの作成
- フロー種別の選択
- Flow Builderのレイアウト選択
- 基本設定
- フローのステップ追加
- ステップの設定
- フローの保存
- フローのデバッグと有効化
1.新しいフローの作成
設定画面のクイック検索ボックスに「フロー」と入力し、「プロセスの自動化」の下にある「フロー」を選択すると、フローの作成・編集画面に遷移します。
新しくフローを作成する場合は、「新規フロー」を選択します。
既存のフローを編集する場合は、フローの名前をクリックします。

2.フロー種別の選択
新規フローの開始時にフローの種別を選択します。
フローの種別によって出来ることが異なるため、目的にあった種別を選択します。
例えば、画面フローではURLやボタンクリックなどで起動し、ユーザに入力させる画面を表示させることができます。

3.Flow Builderのレイアウト選択
フローを作成するFlow Builderのレイアウトを決めます。
自動レイアウトと自由形式の2種類ありますが、画面のレイアウトが異なるだけでどちらを選んでも機能は変わりません。
※初期設定では自動レイアウトになっています。

4.基本設定
「+」ボタンを押し、「画面」要素を選択します。

画面右側のプロパティからフロー要素の名前、API参照名、説明文などを設定します。
API参照名は、フロー要素(今回は画面)をきっかけに別のフローを起動する時などに使用します。

5.ステップの追加
特定のアクションの実行や、レコードの更新などの実行したいフロー要素を追加していきます。

フローで使用する値や変数の設定も、こちらで行います。
画面左側にあるコンポーネントから、画面に表示させる要素の種類(例:数値、テキストなど)を選択し、表示ラベルとAPI参照名を設定します。

6.追加したフロー要素の設定
フロー要素を追加する際に、どのような条件でどのようなアクションを実行するのかの詳細を設定します。
6-1 レコードを作成する場合
- 「+」ボタンをクリックし要素の追加を行います。

- 「レコードを作成」を選択します。

- フロー要素の名前、API参照名、説明文を設定した後、作成するレコード数、レコード項目の設定方法を設定します。
レコード作成時に、フローで作成した値を使用するかどうかも設定可能です。

6-2 画面の追加
- 「+」ボタンをクリックし要素の追加を行います。

- 「画面」要素を選択します。

コンポーネントは、追加したいコンポーネントをクリックして追加するか、コンポーネントをキャンバスにドラッグすることで追加することができます。
7.フローの保存
一通り設定が出来ましたら、画面右上の「保存」ボタンを選択します。
「保存」ボタンを押さないと、次の手順に進むことができません。

8.フローのデバッグと有効化
保存が完了すると、フローのデバッグと有効化が可能になります。
「デバッグ」では、作成したフローがどのような挙動になるかをテストすることができます。
また、「有効化」をクリックすることで初めて作成したフローが利用可能な状態になるため、どちらもリリース前に対応しておく必要があります。
以上でフローの設定は完了です。
まとめ
本記事ではSalesforceフローについて、簡単にご紹介しました。
Salesforceフローを活用することで、レコードの作成や更新の自動化など様々な作業を効率化することができます。
プログラミングが苦手な方でも視覚的にわかりやすいインターフェースで設定を進めることができますので、ぜひチャレンジしてみてください。
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