マーケティングオートメーションは、企業のマーケティング活動を可視化し、自動・効率化するための一連の仕組みです。
2010年以降、日本の企業でも少しずつ導入され始めていますが、「詳しく知りたい」「どうやって導入すればいいのか分からない」という方も多くいらっしゃいます。
そこで本記事では、マーケティングオートメーションを導入すべき理由から導入方法までを解説いたします。
マーケティングオートメーションについて知りたい方や導入を検討している方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
マーケティングオートメーションとは
マーケティングオートメーションとは、集客や販売促進、顧客管理といった一連のマーケティング活動を可視化・自動化し、業務の効率化や生産性の向上を目指すツールです。
企業が新規顧客を獲得するためには、リード(見込み顧客)一人ひとりに合った情報を、最適なタイミングで提供する必要があります。
リードに直接連絡を取り、その都度興味・関心のある情報を提供するのがマーケティング活動の理想です。
しかし、リードに最適な情報を提供し続けるには営業担当者による管理が欠かせず、直接連絡するにも多大な時間がかかってしまいます。
効率が悪いだけでなく、タイミングの違いで競合他社の顧客になる可能性もあるでしょう。
そこで役に立つのが「マーケティングオートメーション」です。
マーケティングオートメーションを活用すれば、これまで営業担当者が行ってきたリードの管理・育成や連絡などの工程を自動化できます。
時間がかかる工程を省略することで、商談数自体のアップにもつながるのです。
マーケティングオートメーションを導入すべき理由
インターネットの普及により、誰でも気軽に情報の検索ができるようになったため、リードは自身で製品・サービスのリサーチを行うようになりました。
営業担当者が連絡をする頃にはすでに情報収集・選定を終えていることも多く、提案の機会すら得られないことも珍しくありません。
そのため、企業はリードが情報収集を行っている段階で接点を持ち、定期的に連絡を取りながら自社の製品・サービスを提案する必要があります。
情報収集段階から提案を行っておけば検討対象に入りやすいため、マーケティングオートメーションを導入すべきと言えます。
マーケティングオートメーションでできること
マーケティングオートメーションは、リードの獲得から管理、育成、絞り込みまでの一連の工程を自動化できるのが特徴です。
自動化することで業務を効率化し、コストの見直しや生産性の向上といった企業それぞれの課題解決にも役立ちます。
リードの獲得(リードジェネレーション)
自社製品・サービスに対する潜在顧客の中からリードを獲得します。
リードの獲得は「リードジェネレーション」と呼ばれており、一般的には以下のような手法で用いられます。
【オフライン】
- 展示会
- イベント
- セミナー
- 訪問営業
【オンライン】
- Webサイト
- SNS
- インターネット広告
- SEO対策
- コンテンツ配信
これらの手法の中から、自社の製品・サービスに合うものを組み合わせて、リード獲得を目指すのが特徴です。
リードの管理
獲得したリードは、マーケティングオートメーションへ登録することでまとめて管理ができるようになります。
たとえば、リード獲得に至った課程や基本情報、コミュニケーション履歴などを登録可能です。
また、商品・サービスの検討度合いや行動データなども登録して、ジャンルごとに一括管理ができます。
マーケティングオートメーションがあれば、リードの情報を漏れなく管理することができ、誰が見ても状況を理解できるようになります。
リードの育成(リードナーチャリング)
管理しているリードに対してアプローチを行い、効果的な育成もできます。
たとえば、メール送信機能を活用して、以下のようなアプローチが可能です。
メルマガ
管理しているリードに対して一斉送信する。
ステップメール
リードの状態に合わせて段階を踏んでメールを送信する。
ターゲティングメール
特定の行動を取ったリードに対して送信する。
管理しているリード全員に同じ内容のメールを送信するだけでなく、条件に合わせてセグメント配信もできます。
また、メールの開封率やクリック率、コンバージョン率なども確認できるため、配信しながら効果的な内容へと改善も可能です。
リードの絞り込み(リードクオリフィケーション)
マーケティングの効率を良くして効果を上げていくためには、リードの絞り込みも必要です。
マーケティングオートメーションでは、リードの行動履歴やサイトへのアクセス履歴などからリードクオリフィケーションを行い、より効果の高いアプローチができるようになっています。
たとえば、Webサイトの商品情報ページへ頻繁にアクセスしているリードは、商品への関心度が高いと判断できるため、積極的なアプローチが有効です。
反対に、メールを配信してもほとんど開封しないようなリードは、商品・サービスへの関心度が低く、熱心にアプローチする段階ではないと判断可能です。
このように、マーケティングオートメーションではリードの状態に合わせた絞り込みもできるようになっています。
マーケティングオートメーションで期待できる5つの効果
マーケティングオートメーションは、リードの管理やメール配信以外にも、さまざまな効果が期待できます。
ここでは、期待できる効果を5つ解説します。
見込み客を資産にできる
これまで、商談や展示会などで名刺交換をしても、データ管理は個人任せになっていたため、せっかくのリード情報を活かせていないという問題がありました。
しかし、マーケティングオートメーションを活用すれば、リード情報の記録・管理ができ、状況に応じてコミュニケーションをとることができます。
商談時には見込みがなかった相手でも、コミュニケーションを重ねることで状況は変化するため、フォローの仕組みを確立できていればリード情報は資産にすることができます。
今までとは異なる案件や商談につながる
マーケティングオートメーションではリード情報を可視化できるため、今までアプローチできていなかった層に対しても、最適なフォローが入れられるようになります。
メール配信やWebサイトへのアクセス履歴を元にリードの行動を把握し、見込み度合いに合わせたコミュニケーションを取っていくことにより、新たな案件や商談にもつなげることができます。
営業活動そのものの自動化
マーケティングでは、顧客一人ひとりに合わせた「One to Oneマーケティング」が求められるため、個別に分析を行い、必要なアプローチを検討しなければいけません。
しかし、マーケティングオートメーションでは営業担当者やマーケティング担当者が行っていたアプローチを自動化できるため、負担の軽減・効率化が可能です。
あらかじめ設計などは行う必要があるものの、営業活動そのものを自動化にできるのが特徴です。
成約率の高い顧客にアプローチできる
営業活動では、リードの獲得から関係構築までに多くの時間を要しますが、リード自身がリサーチを行うようになった今、時間をかけても商談・成約まで到達しづらくなっています。
しかし、マーケティングオートメーションは、リード情報から興味・関心度合いを可視化できるため成約率の高い顧客にアプローチすることが可能です。
たとえば、商談につながる見込みが低いリードに対しては、マーケティングオートメーションでメール配信などを行い、最適な機会を探ります。
反対に、すでに商談の見込みが高いリードに対しては、営業が直接対応して商談・成約へとつなげていきます。
成約率の高い顧客を把握することができれば、リード全員に時間をかける必要もないので効率アップも期待することができます。
全体的なコスト削減につながる
今までは、成約率の高い・低いが可視化しづらかったため、全てのリードに対して同じアプローチを行っていました。
また、リードの関心を得られていないにもかかわらず、広告を出し続けていた企業もあるでしょう。
マーケティングオートメーションは、リードの管理・育成に加え、情報の可視化もできるため、無駄を省いてコスト削減が期待できます。
SFAやCRMとの違い
マーケティングオートメーションと合わせて「SFA」や「CRM」という言葉を目にすることも多いかと思います。
これらの言葉は似た意味で使われることが多いものの、得意分野や特徴は異なります。
名称 | 得意分野 | 特徴 |
---|---|---|
MA | マーケティング活動の自動化 | リード管理・育成から選別までを自動化できる |
SFA | 営業担当者の支援 | 商談開始から成約までの営業活動を記録・共有できる |
CRM | 顧客との関係構築 | 顧客との関係維持・向上のための分析ができる |
MAの得意分野と特徴
MAは、冒頭からご紹介しているように「Marketing Automation(マーケティングオートメーション)」の略です。
マーケティング活動の自動・効率化を得意とし、リードの管理から育成、抽出までの一連の流れを行えるのが特徴です。
SFAの得意分野と特徴
SFAは、「Sales Force Automation(セールス・フォース・オートメーション)」の略です。
営業担当者の支援を目的としたツールで、商談内容や進捗度合い、成約確度など、商談に関するデータ管理を得意とします。
データは営業全員で確認できるため、上司からのアドバイスやフォロー入れ、スムーズな引継ぎにも役立つのが特徴です。
SFAを導入すれば、個人で行っていた営業活動をチーム全体で進められるようになります。
CRMの得意分野と特徴
CRMは、「Customer Relationship Management(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)」の略です。
自社と顧客との関係構築を目的としたツールで、顧客の情報管理を得意とします。
一見、SFAと同じように感じますが、SFAは商談ごとに管理するのに対し、CRMは顧客一人ひとりの情報を管理するのが特徴です。
製品の購入履歴や問い合わせ履歴、要望などをCRMで一元管理し、顧客満足度の向上やファン化を目指します。
導入前に検討すべきマーケティングオートメーション4つの注意点
マーケティングオートメーションには、多くの魅力があります。
しかし、注意点もあるので、導入前に理解しておいてください。
事前準備と運用体制構築にかかるコストの増加
マーケティングオートメーションはマーケティングをサポートしてくれる優秀なツールですが、導入・運用するためには事前準備が欠かせません。
また、運用を行う人材も必要になるため、体制構築にかかるコストが増加することもあります。
運用前のコスト増加に不安を覚えるかもしれませんが、効果的なマーケティングに必要な費用と理解しておいてください。
運用にかかる業務量の増加
マーケティングオートメーションは自動化できるため、業務が楽になると思う方もいるかもしれません。
もちろん、これまで手動で行っていたマーケティング業務を自動化できるため、効率が良くなるのは事実です。
しかし、効果を得るためには日々の細かい分析やリードに合わせたアプローチが必要になり、業務量が増加する可能性もあります。
運用したからといって業務が減るわけではないので注意しましょう。
導入するだけでは成果は出ない
マーケティングオートメーションは、導入するだけでは効果を得られません。
導入後、実際に運用してみると新たな課題も生じるため、改善を繰り返していく必要があります。
PDCAサイクルを回しながら運用することで、成果を得られるでしょう。
自社の課題を明確にし、解決できるツールを選ぶ
マーケティングオートメーションは、ツールごとに機能が異なります。
そのため、自社の課題が解決できるツールを選ばなければいけません。
「安いツールをとりあえず導入してみよう」などと考えていると失敗してしまうので、自社の課題を明確にし、合うツールを選んでください。
マーケティングオートメーション導入の流れ
マーケティングオートメーションを導入する場合、現状の分析から社内全体の連携、フローの整備など、さまざまな工程が必要です。
ヒアリングによる現状の分析
まずは、どんな課題があるのかヒアリングし、現状の分析を行います。
たとえば、「リードは獲得できているけれど、効果的な育成ができていない」「顧客データをまとめて管理したい」など、企業ごとにさまざまな課題があるでしょう。
ヒアリング内容によっては、マーケティングオートメーションではなく、SFAやCRMが必要になる場合もあるため、できるだけ幅広くヒアリング・分析するようにしてください。
既存の顧客データの精査
自社で所有している既存の顧客データを精査していきます。
個人で管理している名刺や顧客リストなども、漏れなく含めるようにしてください。
正しくデータ化できていれば、マーケティングオートメーションのフロー構築もしやすくなり、より効率よくリードへのアプローチが可能です。
顧客データが多くて精査しづらい場合は、データクレジングツールなどを用いて、業種や重複のチェックを行いましょう。
現状の課題と必要な機能のすり合わせ
ヒアリングを通して現状の課題が判明したら、どんな機能があれば改善に繋がるのかすり合わせを行います。
たとえば、「リード獲得後の育成ができていない」という場合、リードが何に興味をもっているのかアクセス解析を行い、見合った内容のメール配信を行うのが有効です。
マーケティングオートメーションには以下のような機能が備わっているので、現状の課題に合わせて選定しましょう。
・リード管理
・スコアリング
・メール文の作成・配信
・シナリオ作成
・ランディングページやフォームの作成
・アクセス解析
・広告連携
・SFAやCRMなどのシステム連携
より必要な機能は何かすり合わせて、優先順位を決めてください。
マーケティングオートメーションの比較検討
課題改善に必要な機能のすり合わせができたら、実際にマーケティングオートメーションの比較検討を行います。
比較検討する際は、以下5つののポイントを意識してください。
・必要な機能が揃っているか
・使わない機能が入っていないか
・誰もが使いこなせるツールか
・BtoB向けのツールかBtoC向けのツールか
・導入や運用にどれくらいのコストがかかるか
ツールを導入しても、必要な機能がなかったり使いづらくては意味がないので注意しましょう。
導入の設計とフローの構築
ツールを選定したら、導入設計とフロー構築を行う必要があります。
大きく分けて以下の4つです。
シナリオ設計
リードの行動に対して、どのようなアプローチするのか
スコアリング
指定したアクションを起こしたリードをスコア化してアプローチする
カスタマージャーニーマップ作成
製品やサービスをどのように知り、興味や関心を持って購買に至るのか
コンテンツ・クリエイティブ作成
メールのテキストやランディングページなどの作成
マーケティングオートメーションでどのようなアプローチを行うのかは担当者自身で設定しなければいけないため、自社の課題に合わせて決めるようにしてください。
社内全体での連携
マーケティングオートメーションはマーケティング部門だけで運用するのではなく、社内全体で運用してこそ高い効果を得ることができます。
そのため、他部署とも連携を取り、社内全体で情報共有できるような仕組みを構築しましょう。
運用フローの整備
マーケティングオートメーションを導入した後は、運用フローを整備します。
誰が中心となって運用するのか、どのタイミングで分析や改善を行うのかなど、明確にしておきましょう。
まとめ
マーケティングオートメーションは、これまで不明確だったマーケティング活動を可視化・自動化し、業務の効率化と生産性の向上を目指せるツールです。
導入前の準備や、運用を開始してからも改善し続けなければいけませんが、マーケティングでより効果を出すためにも、導入を検討してみてください。
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