今回は、小規模事業者持続化補助金(以下、持続化補助金)の概要や種類、申請方法について解説をしていきます。
「補助金を使ってビジネスを拡大したいけど、どうやっていいのかわからない」という方も多くいらっしゃいます。
そこで本記事では、数ある補助金の中でももっとも活用されている持続化補助金について対象者から申請まで一連の流れをご紹介していきます。
持続化補助金について興味のある方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
持続化補助金とは
持続化補助金とは、小規模事業者が自社の経営を見直し、持続的な経営に向けた経営計画書や補助事業計画書を作成した上で、販路開拓や生産性向上の取り組みを支援する制度です。
なお、持続化補助金には審査があり採択されてはじめて、補助が受けられます。
持続化補助金の種類
持続化補助金の種類は大きくわけて「通常枠」と「特別枠」に分類されます。
さらに特別枠は、「賃金引上げ枠」「卒業枠」「後継者支援枠」「創業枠」「インボイス枠」の5つに分類されます。
なお、従来の低感染リスクビジネス枠は終了しています。
この後、詳しく解説をしますが、特別枠のほうが補助金上限額が高くなっているのが特徴です。
もし特別枠に該当しない場合は、通常枠で申請するようになります。
対象者
補助金の対象となるのは以下の定義の小規模事業者です。
小規模事業者に法人、個人は問いません。
ただし、個人事業主やフリーランスの場合は事前に開業届の提出を行っている必要があります。
小規模事業者の定義
業種 | 従業員数(常勤) |
---|---|
製造業その他・宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
卸売業・小売業・サービス業 | 5人以下 |
持続化補助金(通常枠)とは
持続化補助金(通常枠)は、販路開拓や販路開拓の取り組みとあわせて行う業務効率化を目的とした補助金です。
補助率と補助金の限度額
持続化補助金の補助率と補助金の限度額は以下のとおりです。
補助率:3分の2
限度額:50万円
たとえば、新しい商品の製造設備を導入する金額が120万円だった場合、
120万円 × 2/3 = 80万円
80万円 > 50万円ですので、この場合の補助額は、50万円となります。
対象となる経費【全11種類】
持続化給付金において、対象となる経費は次のとおりです。
1.機械装置等費 | 製造装置の購入など |
2.広報費 | 新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置など |
3.ウェブサイト関連費 | ウェブサイトやECサイトなどを構築、更新、改修するために要する経費(補助金交付申請額の1/4が上限、ウェブサイト関連費のみで申請できない) |
4.展示会など出展費 | 展示会・商談会の出展料など |
5.旅費 | 販路開拓(展示会などの会場との往復を含む)などを行うための旅費 |
6.開発費 | 新商品・システムの試作開発費など(販売商品の原材料費は対象外) |
7.資料購入費 | 補助事業に関連する資料・図書など |
8.雑役務費 | 補助事業のために雇用したアルバイト・派遣社員費用 |
9.借料 | 機器・設備のリース・レンタル料(所有権移転を伴わないもの) |
10.設備処分費 | 新サービスを行うためのスペース確保を目的とした設備処分など(経費総額の1/2が上限) |
11.委託・外注費 | 店舗改装など自社では実施困難な業務を第三者に依頼(契約必須) |
必要な書類一覧
ここでは、事業補助金の申請に必要な書類をご紹介していきます。
まず、覚えておくべきは「応募者全員」が必要な書類があり、単独申請と共同申請によって提出する書類が異なります。
さらに、個人事業主、法人、特定非営利活動法人ごとに追加で必要な書類が異なります。
一部の書類は、電子申請をすることで提出が免除されるので覚えておきましょう。
では、順番にご紹介していきます。
応募者全員【単独申請の場合】
- 小規模事業者持続化補助金事業に係る申請書(様式1-1)【必須】電子申請の場合は不要
- 経営計画書兼補助事業計画書①(様式2-1)【必須】
- 補助事業計画書②(様式3-1)【必須】
- 事業支援計画書(様式4)【必須】
- 補助金交付申請書(様式5)【必須】電子申請の場合は不要
- 電子媒体(CD-R・USBメモリなど)【必須】電子申請の場合は不要
応募者全員【共同申請の場合】
- 小規模事業者持続化補助金事業に係る申請書(様式1-2)および別紙「複数事業者による共同申請/共同申請者一覧」【必須】
- 経営計画書(様式2-2)【必須】
- 補助事業計画書(様式3-2)【必須】
- 事業支援計画書(様式4)【必須】
- 補助金交付申請書(様式5)【必須】
- 電子媒体(CD-R・USBメモリなど)【必須】
次に、個人事業主、法人、特定非営利活動法人が申請をする際に必要な書類です。
個人事業主
7.直近の確定申告書
【第一表、第二表、収支内訳書(1・2面)または所得税青色申告決算書(1~4面)】(税務署受付印のあるもの)または開業届(税務署受付印のあるもの)【必須】
収支内訳書がない場合は貸借対照表および損益計算書(直近1期分)を作成し提出
法人
7.貸借対照表および損益計算書(直近1期分)【必須】
8.株主名簿
特定非営利活動法人
7.貸借対照表および活動報告書(直近1期分)【必須】
8.現在事項全部証明書または履歴事項全部証明書【必須】
9.法人税確定申告書(表紙(受付印のある用紙) および別表4(所得の簡易計算))(直近1期分)【必須】
なお、必要な書類の一部は以下のサイトよりダウンロードできます。
https://r3.jizokukahojokin.info
持続化補助金(特別枠)とは
持続化補助金(特別枠)は、次の5つの枠を指します。
- 賃金引上げ枠
- 卒業枠
- 創業枠
- インボイス枠
- 後継者支援枠
こちらも順番に解説をしていきます。
賃金引き上げ枠
賃金引き上げ枠は、2021年10月の最低賃金引き上げに対応したものです。
応募要件
- 補助事業実施期間に事業場内最低賃金を、地域別最低賃金より30円以上引き上げること
- すでに事業場内最低賃金が地域別最低賃金より30円以上を達成している場合は、現在支給している事業場内最低賃金より30円以上に引き上げること
事業場内最低賃金とは、補助事業実施場所で働く従業員の中で最も安い時給を指す。
補助率と補助金の限度額
補助率:3分の2 直近の決算が赤字(課税所得がゼロ)の場合は補助率が4分の3
限度額:200万円
卒業枠
卒業枠は、補助を受けることで事業規模を拡大し、小規模事業者でなくなることが条件となっています。
応募要件
補助事業実施期間に雇用を増やし、前述の小規模事業者の定義となる従業員数を超えて下記の従業員規模に拡大すること
業種 | 従業員数(常勤) |
---|---|
製造業その他・宿泊業・娯楽業 | 21人以下 |
卸売業・小売業・サービス業 | 6人以下 |
補助率と補助金の限度額
補助率:3分の2
限度額:200万円
創業枠
創業枠は、開業3年以内の小規模事業者向けの販路開拓の新しい取り組みを応援するためのものです。
応募要件
過去3年以内に「特定創業支援など事業」による支援を受けていること。
「特定創業支援など事業」とは、認定市区町村または認定連携創業支援など事業者が実施した創業支援の事業のこと
補助率と補助金の限度額
補助率:3分の2
限度額:200万円
インボイス枠
インボイス枠は、小規模事業者がインボイス発行事業者に転換するために必要な支援をするものです。
応募要件
消費税免税事業者が、新たにインボイス発行事業者として登録すること
補助率と補助金の限度額
補助率:3分の2
限度額:100万円
後継者支援枠
後援者支援枠は、将来的に事業承継を行う予定があり、新たな取り組みを行う後継者候補を支援するものです。
応募要件
「アトツギ甲子園」のファイナリストになっていること
「アトツギ甲子園」とは、全国各地の中小零細企業の承継予定者(アトツギ)に限定して中小企業庁が開催するピッチイベントです
補助率と補助金の限度額
補助率:3分の2
限度額:200万円
事業化補助金の採択から受け取りまでの7つのステップ
ここからは、事業化補助金の採択から受け取りまでの流れについて解説をしていきます。
採択から受け取りまでの大まかな流れは以下のとおりです。
- 採択通知
- 「採択結果通知書」が送付され「採択」もしくは「不採択」が決定されます
- 交付申請
- 「交付決定通知書」が事務局から送付されます
- 補助事業開始
- 事業計画に基づいて補助事業の取り組みを開始します
- 必要に応じて「変更承認申請書」「中止(廃止)申請書」を提出します
- 実績報告
- 補助事業の実施期間が終了すれば期限内に「実績報告書」などを提出します
- 受理後に問題なければ「確定通知書」が事務局から通知されます
- 精算払請求
- 「精算払請求書」を提出して請求手続きを行います
- 補助金振込
- 受理後に問題なければ振込手続きが行われ補助金を受け取れます
なお、上記の流れについて事前着手承認を得ている事業者については異なる場合があります。
また、「事業化状況報告」として補助事業完了日に属する年度の終了後を初回として、以降5年間(合計6回)の報告が必要です。
持続化補助金の申請最新スケジュール
持続化補助金の申請スケジュールは以下のとおりです。(2022年11月現在)
第12回受付締切:2023年6月1日(木)
第13回受付締切:2023年9月7日(木)
よくある質問
ここでは、株式会社AZにてよくお問い合わせをいただく「持続化補助金に関する質問」をまとめました。
Q.持続化補助金は何回でももらえますか?
はい、申請できます。
申請の対象外になる条件に「申請日から10か月以内に採択を受けたもの」と記載があります。
ですので、採択された人でも採択された日から11カ月以上経過していれば再度、申請できます。
Q.入金のタイミングはいつですか?
「精算払請求書」を提出して請求手続きを行い受理されると後日、指定の口座に小規模事業者持続化補助金が振り込まれます。
なお、 実際に入金される時期は精算払請求から約2ヶ月後となるケースが多いようです。
Q.持続化補助金を利用した際のデメリットはありますか?
実際に持続化補助金をもらうためにはかなりの手間がかかります。
商工会議所や商工会の人とのやりとり、申請に必要な書類の作成や報告もしなければなりません。
また、提出した書類に不備があった際は、速やかに対応をする必要があります。
もし自社のみで申請をするのが難しいという場合は、代行できる企業や専門家を頼るとよいでしょう。
Q.持続化補助金を利用した際のデメリットはありますか?
持続化補助金は、「同一事業者が同一の内容について、国が実施する助成制度を併用することはできない」とされています。
そのため「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」といった補助金との併用はできないので注意しましょう。
まとめ
今回は、持続化補助金の概要や種類、申請方法についてご紹介しました。
持続化補助金は、うまく活用することで貴社のビジネスの発展に大きく寄与してくれます。
ぜひ、この記事を参考に持続化補助金の利用を検討してみてください。
ただし、申請や提出資料の作成に手間がかかるというのも事実ですし、期限もあります。
もちろん、自社のみですべて行うことは不可能ではありませんが、「餅は餅屋」というように専門家に相談した方が間違いないというケースも少なくありません。
いち早く持続化補助金の利用を考えているのであれば、すぐに行動しましょう。
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